「答えを見ながら勉強していいですか?」という質問をよくいただきます。
わからない問題でも自分で考え続けた方がいいのか、あるいは答えを見てもいいのか、悩む人が多いようですね。
結論を先に言うと、この悩みへの塾としての答えは、
「答えを見ながら勉強してもいい」
です。
ただし、答えを見てもいいと言うには条件があります。
その条件とは
- 見て学んだ後に、見ないでテストする
- 「繰り返し学習」の場合、2回目からはできるだけ見ない
という2つです。
この2つの条件を満たせば、答えを見ながらの勉強はとても効果的な勉強であると言えます。
ということで今回は
ということについて、詳しく解説していきますね。
答えを見ながら勉強してもいい理由
答えを見ながら勉強してもいい理由は2つあります。
それは、
②:型を知ることで考える力が身につく
という2つです。
それぞれ見ていきましょう。
答えを見ていい理由①:知らないものは、知らない
これは単純なことですが、知らないものは、知りませんよね。
それゆえ、「まずは答えを見て、しっかりと知る」のは意味のある勉強法です。
実際に聞いたことがない知識は当然として、一度聞いただけで記憶からすっかり抜け落ちてしまった知識も、「知らない」とほとんど同じです。
(教えた側としては「知りません」と言われるとかなり悲しいものです。復習して…)
- 知らない漢字
- 知らない単語
- 知らない公式
- 知らない歴史
- 知らない化学式
そういった「知らないこと」について考え続けたとしても、ほとんどの場合、正しい知識は出てきません(奇跡が起こるか、天才でない限り)。
しかもテストや受験が控えていたら、時間的にも大きなロスになってしまいます。
答えを見て覚えれば数分のところを、何十分、何時間と考え続けていたら、間に合うものも間に合いませんよね。
ということで、
だから、まず答えを見て、正しい知識を手に入れる
これは効率的な方法だと言えます。
答えを見ていい理由②: 型を知ることで考える力が身につく
答えを見ながら勉強することで、考え方や答え方といった「型」を知ることができます。
そして、型を知ることによって、考える力が身につきます。
その理由は、理解できる考え方や答え方が知識として頭に入っていると、その組み合わせでいろいろな問題に対応できるようになるからです。
つまり、答えを見て勉強することで考える力が身につくのですね。
=考え方、答え方の「型」を知ることができる
=考える力が身につく
これには逆の意見もあって、よく、時間がかかっても自力でじっくり考えることで、考える力が身につくと言われることがあります。
そして、特に小学校低学年~中学年くらいまでは実際にそういう場合も多いですし、塾でも学年に関わらず自力でじっくり考えさせることが多々あります。
例えば、公式や法則を覚えてしまえばすぐに解ける問題でも、あえて自力でそれを探し出させることが大切な場合もあるのです。
というのも、ただ与えられた公式に当てはめるのではなく、今使える知識でできるところまで考えることで伸びる力があるからです。
とはいえ、自力で伸ばすのをうまく成功させるには、
- 後で自分の解き方と解説とを見比べて、正しい解き方を理解する
- 指導者が最終的に考えが正しいかどうかをチェックする
といった対応ができなければ成り立たないことが多いのも確かです。
そうでないと、論理的に間違ったスーパーオリジナルな方法にこだわるようになってしまう事にもなりかねません(これが多かったりします…それを直すのが本当に大変)。
よって、特に家庭学習では、答えを見て、正しい考え方や答え方といった「型」を知ることが、時間的にも、考える力を伸ばす上でも効果的だと言えます。
なぜ答えを見た後に「見ないでテスト」するのか
最初に、答えを見て学んだ後に「見ないでテストする」ということを条件としてお伝えしました。
では、なぜ答えを見た後に「見ないでテスト」するのでしょうか。
その理由は
- 「わかったつもり」を防ぐため
- 「覚えたつもり」を防ぐため
です。
詳しく解説しますね。
答えを見て「わかったつもり」になるのを防ぐため
答えを見て「わかった!」と思う人は多いですよね。
しかし、特に答えを見て学んだ直後は、「わかったつもり」になってしまっていることが多いのです。
以下に私自身の小学生のころの「わかったつもり」体験談をご紹介します。
今の塾の授業スタイル(対話型)の基礎にもなっている実話です。
~学校の宿題がわからなかったある日曜日の昼下がり~
ねえお父さん、この問題教えてくれる?
どれどれ。
これは~で、ここが~~で、だから答えは55になるんだよ
わかった!
なるほど~ありがとう!
わかったのかい?
じゃあ説明してごらん
答えは55でしょ?
答えじゃなくて、どう考えるのかの説明だよ
どう考えるのか…?
えっ、と…
わ、わかんない…
まだわかってなかったってことだね。
じゃあもう一回だな
いかがでしょうか。
この小学生時代の私のように、「わかった!」と思っていても、「わかったつもり」になってしまっていることがあるんですね。
特に、答えを見た後なんてほとんどの人が「わかったつもり」になります。
それはそういうものなんです。
だから、テストする(あるいは人に説明する)。
そうすると、本当にわかっているかどうかが確認できます。
つまり、答えを見て「わかったつもり」になるのを防ぐことができるのです。
※考え方がちゃんと理解できているかを確かめながらテストしてくださいね。
答えを見て「覚えたつもり」になるのを防ぐため
「見ないでテスト」するもう一つの理由は、「覚えたつもり」を防ぐということです。
先ほどの「わかったつもり」と同じく、答えを見て「覚えたつもり」になってしまうことがあるのですね。
見て覚えられた気がしても、実際には、見るだけ、聞くだけでインプットした知識は、かなり忘れやすいのです。
アメリカ国立訓練研究所の研究で、学習と定着率の関係を表した「ラーニングピラミッド」という図があります。
このような図です。
こちらの図で、「講義~視聴覚」の学習定着率が低く示されている通り、「見るだけ」や「聞くだけ」の学習はかなり忘れやすいと言えます。
そのため、答えを見て理解した後は、必ずテストをしましょう。
そうすることで本当に覚えたかどうか確認できますし、そのテスト自体が記憶を定着させることに役立ちます。
「2回目からはできるだけ見ない」の理由
「答えを見ながら勉強していい」と言うための条件のもう一つが、
「繰り返し学習の場合、2回目からはできるだけ見ない」
でした。
なぜ「2回目からはできるだけ見ない」のかというと、一言でいえば、
「思い出すための脳の回路」を育てるため
です。
思い出すための脳の回路を育てるというのは、難しい言葉でいうと「情報の出し入れが自由な長期記憶にする」ということです。
実は、情報を出し入れ自由な長期記憶にするには、覚えようとした記憶が消えたか消えそうになっている段階で「思い出そう」とすることが重要なのです。
言いかえると「記憶から引き出そう」「アウトプットしよう」とすることが大事。
しかし、答えを見てしまうと「記憶に入れる」「インプットする」ことになってしまいます。
すると情報は短期記憶として保存され、その状態でテストをしても短期記憶の確認にしかならず、長期記憶にすることができないということが多いのです。
それゆえ、
- 1回目は、答えを見てからすぐに「見ないでテスト」して、理解を確認する
- 2回目からは、最初から「見ないでテスト」して、思い出そうとすることで長期記憶化する
これが大事だということになります。
繰り返し学習をするのなら
「長期記憶にする」ことができるよう、2回目からは最初から「見ないでテスト」
しましょう。
せっかく忘れかけて長期記憶にするチャンスが来ているのに、答えを見てしまってはもったいないです。
答えを書き写すだけの勉強法はやめたほうがいい?
ここまで解説してきたとおり、条件さえ満たせば、答えを見ながら勉強するのは効率的で効果的な勉強法です。
ただし、答えを書き写すだけの勉強法はあまりおすすめできません。
「答えを見て勉強する=答えを写す」と考える人も少なからずいると思うので、これについても解説しておきますね。
わからない問題や間違った問題があったとき、答えを見て書き写すということはよくあると思います。
このとき、2つの状況が考えられます。
その状況とは
- 答えを見て、理解した上で、書き写している
- 答えは見たけれど、理解していないまま、書き写している
という2つです。
それぞれについて解説しますね。
「答えを見て、理解した上で、書き写している」場合
「答えを見て、理解した上で、書き写している」場合、理解した上で「書く」という方法をとっているので、その分記憶には残りやすくなります。
とはいえ、この理解は短期記憶として脳の中に保存されています。
そのままでは忘れてしまいやすいので、長期記憶化(思い出す回路を育てること)ができるように、繰り返し「見ないでテスト」するようにしましょう。
「答えは見たけれど、理解していないまま、書き写している」場合
「答えは見たけれど、理解していないまま、書き写している」という場合は、ほとんど何も残らないと言っても過言ではありません。
例えば
- 数学の問題について、解き方がわからないまま答えだけ写す
- 漢字や英単語について、意味や読み方がわからないまま形だけ写す
このようなことはありませんか?
塾で長年勉強法についての相談を聞いていると、実に多くの子がこのようなやり方をしてしまっていることに気づきます。
詳しく聞くと、学校の先生から、
「形だけでも答えを写してくるように」
「とりあえず1ページ分書いてくるように」
と言われている子もいるようです。
その点では、私自身、学校の提出物や宿題などは期限があるため仕方ない部分もあると思っています。
しかし、そのやり方を、本当に自分のためにやる勉強で使ってしまってはいけません。
理由は単純で、自分のためにならないからです。
「学力を上げたい」
「レベルを上げて、志望校に受かりたい」
そう思うなら、まず理解することが大切です。
自力で理解できなかったら、先生やまわりの人に聞きましょう。
そして理解した後、見ないでテストしましょう。
(初めて取り組んだ問題の場合、写して練習してから「見ないでテスト」するのでもかまいません)
理解した上で、それを自由に取り出せる長期記憶として脳に保存できれば、必ず成績は上がります。
まとめ|答えを見ながら勉強してもいい
ここまで「答えを見ながら勉強してもいい」ということについて、その理由や条件について解説してきました。
最後におさらいしておきましょう。
▼答えを見ながら勉強してもいい理由
- 知らないものは、知らないから
⇒だから、まず答えを見て、正しい知識を手に入れる - 型を知ることで考える力が身につくから
⇒答えを見て、正しい考え方や答え方といった「型」を知ることが、時間的にも、考える力を伸ばす上でも効果的
▼なぜ答えを見た後に「見ないでテスト」するのか
- 答えを見て「わかったつもり」になるのを防ぐため
⇒テストする(あるいは人に説明する)と、本当にわかっているかどうかが確認できる - 答えを見て「覚えたつもり」になるのを防ぐため
⇒テストすれば本当に覚えたかどうか確認でき、そのテスト自体が記憶を定着させることに役立つ
▼「2回目からはできるだけ見ない」の理由
- 「思い出すための脳の回路」を育てるため
⇒毎回先に答えを見てしまうと、情報の出し入れが自由な長期記憶になりにくい - 情報を出し入れ自由な長期記憶にするには、覚えようとした記憶が消えたか消えそうになっている段階で「思い出そう」とすることが重要
▼答えを書き写すだけの勉強法はやめたほうがいい
⇒理解した上で、「見ないでテスト」するのが大切
いかがだったでしょうか。
答えを見ながら勉強していいのかどうか悩んでいる方にとって、ヒントになれば嬉しいです。
しっかり理解し、テストで確認し、繰り返して定着させていってくださいね!